第10話
なにより一番心配だったのは、妻にサラリーマンから職人になる了解をもらうこと。
正直、大反対されると思っていたし、反対されて当然とも思っていた。(当時の日給は3,000円~4,000円)
しかし、職人になりたいと切り出した私に妻は「やってみたら。そんなに会社勤めにストレスが溜まるなら」と。
思いがけず賛成をもらったのだ。
今思うと私以上に心配していたと思う。
なぜならば、家を買って1年目でローンが始まり、そして2歳の子供がいた・・・。
後に聞いた話だが、やはりとても心配していたそう。
独立してから最初めての現場はもう、30年以上経つが鮮明に当時のことを覚えている。
本当に綺麗に仕上がり、『自分で仕上げた!!』と皆に大きな声で言って回りたかった。
とにかく感動した。会社勤めでは味わったことのない感動である。
何度も何度も「出来た!」と1人で叫んだ。
お客様に綺麗になった時の感動を与えるはずが、自分の方が感動してしまった。
その時、感動を与えるのが仕事のやりがいとなったし、
これからもこの気持ちを忘れずに持ち続けたいと思っている。
つづく・・・